愛を欲しがる優しい獣
家でひとりきりになるのは久しぶりのことだった。
淀んだ空気を入れ替えようとベランダの窓を開ければ、チリンチリンと風鈴の音がする。
普段は全く耳に入らないその音に、近づいてくる夏を感じた。
(鈴木くん、気に入ってくれるかしら)
台所の棚の上にこっそり隠した紙袋の中には、佐伯くんからの助言をもとに購入した茶碗が入っている。
白地にブルーの模様の入った、淡く優しい色合いの器だ。
照明に照らされた際のほんのりと光るような美しさが気に入ったのだ。
予算を少し上回ったが、初めて贈るプレゼントとしては良い物を選んだと思う。
後は本人に渡すのを待つばかりだった。