愛を欲しがる優しい獣
夜も更けてくると、花火の打ち上げが始まった。
私も思わずうわあっと子供のような歓声を上げる。
一筋の光が放たれてから間をおいて、破裂音とともに夜空に花火が咲く。
会場が近所なこともあって、庭からでもその大輪を観賞することが出来た。
きっと会場に行ったらもっと綺麗に見えただろう。
ベランダに腰掛けて消えては咲いていく花火を眺めていると、どうしてなのか、この場にいない鈴木くんのことが思い浮かぶ。
(出張、上手く行ったかしら……)
そんなことを考えている内に、あれほど絶えず打ちあがっていた花火も終わってしまった。
名残惜しい気持ちを感じながらベランダから腰を上げると、ちょうど彼が現れた。
「こんばんは」
……スーツ姿の鈴木くんは今日も恐ろしいくらい綺麗だった。