愛を欲しがる優しい獣

(どうしよう……緊張してきた……)

どうしてこういう時に限って二人きりなのだ。

「ご飯、食べた?」

「うん、新幹線で」

緊張を誤魔化そうとするが、会話も弾まない。鈴木くんも今日は口数が少なかった。

(そうだ!)

私はあることを思いついて、箪笥の引き出しの中を漁った。目的のものを発見すると、鈴木くんに提案する。

「せっかくだし、私達も花火やらない?」

私の手にはくじ引きの景品としてもらった花火セットとろうそくが握られていた。

花火セットは姉弟7人でやるには到底、数が足りないためこっそりしまっておいたものだった。

皆にはもちろん内緒だ。

< 99 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop