サムライガール!!

住み慣れた街から逃げるのはそう難しくない。

近所の悪友たちと昔駆け巡った路地などは全て脳内にインプットされている。

大人へ悪戯を仕掛けたときなど、うまく逃げるために抜け道を網羅しておくことは必要なことだ。

アーネストも幾度と通った裏道を全て覚えていた。

例えば今走っているこの通りは野良猫がたくさん住み着いているので、アバンダンドキャットストリートと呼ばれている。直訳すると野良猫の通りという意味なのでそのままだ。

誰にも目を向けられず孤独で生きることを求められた猫達は群れをつくり、密かにここで息をしている。

首輪がついたものから毛並みが泥でまみれて悪い目つきの悪い猫まで。

幅広い性格の住民は現れたアーネストに静かな視線を向けていた。

ここを通り過ぎれば家へと辿り着ける。

辿り着いてしまえばこちらの勝ちだ。流石に中にまで進入してくる勇気はあいつらにはないだろう。

鉄のゴミ箱の上でくつろいでいた猫の視線を感じながらさっさと駆け抜けようとした。

その瞬間、アーネストの視界に数人の男の姿が飛び込んでくる。

ただの通行人という風貌ではなかった。証拠に彼らの目線は可愛らしい猫たちには向いていない。まっすぐアーネストだけを捉えて走りよってきていた。

「げぇ」

見覚えのありすぎるシルエットに心底嫌そうに顔を引きつらせる。

慌てて引き返そうと踵を返すが、更に口角がひくつく結果となった。

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