ストーンメルテッド ~失われた力~
やがて......日は沈み始めた。
風は強まり、波の音はたちまち勢いをます。
「そろそろ、戻りましょうか」
背後から、聞こえた声に二人は振り向く。
それは、二人の背後で静かに見守っていた看護師さんだった。
「うん」
翔は、笑顔で頷いた。
「じゃあ、私はもう行くわね」
「帰るの?」
翔は、ジュノに向きを変えると、そう言った。
「えぇ」
ジュノは、一瞬、悲しげな表情を浮かべたような気がした。
「さぁ、行きますよ」
看護師さんはそう言って、車椅子を動かした。
ジュノは、踵を返してプリュイへと続く境界へ向かい、歩き出した。
ふと、翔が背後を振り向く。
しかし、その時、既に彼女の姿は無かった。