ストーンメルテッド ～失われた力～

過去の記憶

それは......まだ私が幼かった頃。


《迷い森•ダークネス》

ジュノは、石の上に座り仲良しのMr.ハットから頂いた《迷い森の歴史》と言う分厚い本を読んでいた。

中でも、興味が湧いたのは834ページの《ダークネスが作られるまで......》と言う題に心惹かれた。ダークネスは、ジュノが今まで生まれ育って来た場所。惹かれないはずも無かった。

夢中になり、読んだ。

〝 迷い森には、三つの地(ブルーダム、ダークネス、シンフシティ)に分かれる。ダークネスは、西に位置する。ダークネスは闇を生み出した母なる神が初めに住み着いたと言われている地。そこから、このダークネスは生まれた。 〟

「おい、見ろよ！ ジュノがいる」

すると、ジュノをたまたま見掛けた一人の少年は言った。

ジュノも、そろそろ彼らが帰って来る頃だろうとは思っていた。

子供達は、親の趣味の神獣狩りに付き合って、ここから森の奥に位置するシンフシティに出掛けていたのだった。

少年の言った一言で、彼らは一目散にこちらへ駆け付けると、ジュノの居る石の周囲をぐるっと囲った。

......こうなると、逃げ場がない。

「ねぇ、皆聞いて。私のママが言ってたんだけどぅ......」

そう、一人の少女は言うと、今度は小声になって言い出した。

「ジュノは......悪魔の女神だって、言っていたわ」

それは、何処か嫌味を感じる口調に、ジュノの耳には聞こえて来る。

「それ、うちのママも言っているよ！」

「はははははっ。ジュノは悪魔の女神だ！悪魔の女神！」

すると、始まったのは如何にも嫌味を感じさせる歌だった。子供達は、口を揃えてこう言った......。

「やーいやーい、あーくまーの女ー神！」

「あーくまーの女ー神！」

その歌は、ジュノが悲痛を感じるまで続いた。彼女の胃はキリキリと傷んだ。

遂に、たまらなくなったジュノは......闇の波動で、右の手の平から紫色の雷のようなビリビリとした光を一瞬にして、一人の少年に向かい一直線に直撃させた。

これまで元気だった少年は、その場で倒れた。

「きゃー！」

それを目にした子供達は、悲鳴をあげる。

その子供達を、ただ、冷酷に見詰めるジュノ......。

それもその筈だ。このような扱いを受けて、彼らに温かい視線を送る事など、到底出来るはずもない。