ストーンメルテッド ~失われた力~
この時、一瞬、足を止めたものの、再び足を進めて行った。

森の中。黒肌の、ジロりと見詰める二つのギラついた目玉は、キッと彼女を睨み付けていることを、彼女は知らない。……ただ、背中をチクリと刺されるような視線を感じ取ると、肌寒くなった。そのカラスは、見張っているのか、それとも、単なる情報屋か……。いずれにせよ、そのカラスはジロり、彼女を目で追っていた。

森の中には、神々のために作られた、たった一つの通路、大理石の道があり、彼女は道の上を早足で進んで行った。


すると、一頭の傷ついた白い犬神のぐったり倒れた姿を目にする。


恐らく、これも、あの精霊達が......。

そう思うと、彼女はぞっとした。

まずは、闇の精霊達を何とかしなくては......。そうして、再び彼女は足を進めた。

すると......ぞっとする恐ろしい光景を目の当たりにし、彼女は思わず足を止めた。

鋭い牙、ギラついた血の色の瞳、恐ろしく鬼のように怖ついた顔......。

何もかもが、豹変してしまった闇の精霊達は、神獣達のこの森を荒らし、神獣達を襲っていた。

ジュノは、つばを飲み込む。

すると......誰かの足音が聞こえて来た。

その者は、ジュノの丁度、右側で足を止める。

「戦いの神様のご登場かしら」

ジュノは、闇の精霊達から目を離すことも、瞬きすることもなく、右側で足を止めた赤髪の男に、言った。

「っふん。よーくご存知で、闇の女神様」

自信満々で、だけどそこが少し生意気な口調だった。

見れば、目の前に広がる森の光景は嵐だった。闇の精霊達が荒らした森の木々、神獣達は、皆、傷を負っている。

暴れ回る彼らの姿は、恐ろしく、醜い、ただの化け物だった。

愕然として立ち尽くしているジュノと、赤髪の男......。

しかし、意を決してジュノはこう言った。

「......行くわよ」

そして、恐る恐る、一歩、二人が足を踏み出そうとした時だった。
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