ストーンメルテッド ~失われた力~
カゲンとカゲンを心配した二人は付き添いで、アムール城のヴィーナス女王の部屋の前へダに案内された。

三人が中へ入ろうとすると、ダは前に立ちはだかり言った。

「ここで待っていろ」

すると、ダは蛇のにょろにょろとした体を部屋の中へ収まるまでにかなりの時間がかかっていた。

「日が暮れるわ」

思わずジュノは呟いた。

しばらくかかったが、ようやく部屋の中へ入り込めた様だった。

そうして、少しするとダは部屋の中から顔を出して言った。

「入れ」

カゲンが中へ入り、後に続き二人も中へ入ろうとした。

すると、ダに止められる。

「入るな。ヴィーナスは、お前達を呼んだのではない」

ダは、そう言うと扉を閉めてしまった。

仕方が無いので、二人はその場で待機した。

ヴィーナス女王の部屋の中には、ダが入れる程の巨大な別室も作られてあり、ダはカゲンが中へ入ると仕事を終えたかのように、そこへにょろにょろと入って行き、そこから顔を出し二人の様子を伺っている様子だった。

カゲンは驚いてしまった。

そんな巨大な蛇を見事に納められるほどの別室があるとは......。

目の前には、窓の外を見詰めるヴィーナス女王の後ろ姿があった。ふと、ヴィーナスは視線を感じ振り向いた。

「待っていた」

そうカゲンに言うと、ヴィーナスはカエルが大量に入った小箱を取り出すと、ダに近づいた。

「ご苦労だった。今日はゆっくり休め」

そう言ってヴィーナスはカエルを一匹、素手で掴み、ダに差し出すとダは、カエルを長い舌で素早く捕らえ、あっと言う間に食べてご満足な状態だった。

そして、ヴィーナスは可愛がるかの様にダの顔を撫でると、カゲンの方を再び振り向いた。

「そなたのした事は、規則に反する」

「すいません」

すると、カゲンは頭を深々と下げた。

「堅苦しい、顔を上げなさい」

そうして、カゲンはゆっくりと顔を上げる。

「今回の件は、軽い罰で済ましてやろう。理由はもちろんある。
黒川隼人は人間の中で特に粘り強く、特に今は辛い現状であるにも関わらずそなたを気付かう気持ちを持っていた。本当に、流石としか言い様はない。
彼ならば、決してこの世界の存在を暴露する事は絶対にないであろう。
私は黒川隼人という一人の若者を信じる事にした。それで良いな?」

「はい」

「では、罰は明日に始めることとする。それまでそなたは待つのだ。時が来れば、そなたの罰を担当する森の神、ケルノが来る。楽しみに待っていなさい。では、もう良い。行きなさい」

「はい」

一つ例をすると、カゲンは部屋を出た。

その出て行く姿をダは一瞬たりとも見逃さずに、見詰め続けていた。すると、こう口にした。

「あの者は、他の神には無いものが中にある様だ。しかし、それは良い物とも、悪い物とも言える。......それは、運命だ。ある運命があの者の中にある。何か、良いとも悪いとも捉えられる最後があの者には待ちわびている。私にはそれが見えた。......見えてしまった。............なんてことだ」

「それは、何の運命なのだ」

「............簡単に私が言える様な事ではない」

ダは、それだけを口にした。
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