ストーンメルテッド ~失われた力~
突然、城内の廊下からドタバタとした足音が段々と聞こえて来た。

すると、ヴィーナスの部屋を思いっきり開ける音がして、ヴィーナスは振り向いた。

それは、娘のセレネだった。

「お母様。さっき、彼とその友達が城を出て行くのを見ました。エンデュが何かをなさったのですか?」

「セレネ、扉を乱暴に開けてはならないと何度言わせたらわかるのだ。......罰を受けるのはエンデュではない。赤毛のほうだ。分かったら、すみやかに部屋へ戻りなさい」

「お母様。エンデュは、まだ私を思い出せていないのかしら?」

「恐らく......そうだろう。私も色々と何故彼らの大切な記憶が消しさられているのかを探っているところだ。とにかく、セレネ、部屋へ戻りなさいな」

「はい。お休みなさい、お母様」

そう言って、セレネは素直にヴィーナスの部屋から出て行った。

すると、部屋で寝そべっていたダは目を見開きこう言った。

「素直な子だ。しかし、心に深い傷を負っているのが見える。そして、良からぬ未来の眼差しも......。彼女は、もう既に何かに支配されようとしている」

「それは、一体......。セレネが何に支配されようとしていると言うのだ?」

「悪の名に相応しい者だ」

「悪の......名」
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