ストーンメルテッド ~失われた力~

《 アネモイ国•アネモイ学校 》

巨大な岩にそう彫り込められた先にある校内。そこでは、未来ある若者の神々が授業中であった。この時、丁度ライト•ノーノ先生は暇な時間だった。......っと言うより、暇を取るようにしていたと言えば正しいだろう。

「チミの為にわざわざ授業をお休みしたのだ。だから、チミには、しっかりと知識と技を身につけてもらうですね。良いねー」

ライト•ノーノは明るい茶髪に丸メガネが特徴的な先生だった。

「え、あ、はい。良いです」

「光からの防御についての基本はチミもアムール国•フィーリア学校で習ったね?」

ジュノは頷いた。

「ではでは、君の反対能力の光の力を持つ神から身を守る、もっと確実に身を守れる上級の技を教えますね。つまりは、死に追いやられそうになった時の対処法。ではでは、始めるね?」

すると、ライト•ノーノは二つの小さな石をお洒落なオレンジ色のジャケットのポケットから取り出した。

一つは、ライト•ノーノが自らの力を使い、単なる石に光を宿した物。その石は、美しい光で煌びやかに輝きを放っていた。

もう一つの石には、アネモイ学校で闇について教えているJ•ダーク先生が自らの力を使い闇を宿した物である。この石は、何とも怪しげに紫色のオーラが輝きを放っていた。

「私がこの、光が宿った石の力で闇が宿
った石に光を放つとどうなるか」

そう言ってライト•ノーノは、右手に持つ光の宿る石を左手に持つ闇の宿る石へ自らの力で操り、光の石は丸で闇の石にスポットライトを照らし当てるかのように光を照らした。すると、見る見るうちに闇の石は砕けちった。

「このように、砕けちった。ではでは、こうならない為にもチミにはこれを使ってもらうね」

そう言って、オレンジ色のジャケットから再び取り出した物は小さな細長い瓶に入った鏡とでも言えようか? とにかく、それは鏡の様にその瓶を見詰めている自分が移り込んでいた、何とも不可思議な粉である。

「鏡粉」

「か......がみ粉」

「そう、鏡粉ね。これをチミは飲み込んでね」

そう言って、ライト•ノーノはジュノに瓶を手渡した。

そうして、瓶の蓋を開けてジュノは一気に鏡粉を飲み干した。

「あ〜......。全部......。ま、まぁ、大した支障はないでしょう。では、始めるね。さっき、石でやった同じ事ね。これ、飲んだのなら跳ね返せるから大丈夫ですね」

そう言うと、ライト•ノーノはオレンジ色のジャケットから今度は小さな剣を取り出し、安全のため、前には向けず横に向けた状態で力を使うと剣から光が放たれ、ジュノにスポットライトを照らした。

それが、何も無い地面に跳ね返る。すると今度は、何も変哲もない木に光はぶつかり、丁度反対にあった木にぶつかった。

ライト•ノーノは、素早く無意識的に力を使うと光は消え去った。

ジュノは、この時自分の異変に気がついた。指先全体から徐々に、手は鏡の様に、その手を怯えた顔で見詰める自分自身を映し出していた。

「.......................................................................................キャー!!!!」

ジュノはこれまでに無い叫びを上げた。

その声は、校内で授業中の生徒達にも届いた。気ずつとアネモイ学校の生徒達は野次馬の様な状態で窓からジュノを見詰めては皆、笑っていた。

「この粉にはね、飲み過ぎると体の一部が鏡になっちゃう何とも不可思議な副作用があるのですね。......でもチミはまだ、ましな方だね。昔、もっとがぶ飲みをした私の生徒は全身鏡になっちゃって、10年たつとようやく元の姿に戻ったのですね」

「嫌、こんな手、嫌! この手、直して下さいよ」

「私に言われましてもね......。ではでは、試しにやってみましょうか」

そう言うと、ライト•ノーノは力を試しに使った。

すると、今度は後ろの首筋の部分が鏡と化してしまった。

教室から覗く生徒達は、またもや笑いを起こす。
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