檸檬-レモン-



あれから早苗と何回か『レモン』でランチを食べた。

割引券も使った。


篠崎さんらしき人を探したけれど、その姿はなくて。

すっかりお気に入りになったレモンクッキーを大人買いするのが、最近の贅沢。


仕事の合間に食べると、不思議と元気になるんだ。



「これ、ほんと美味いよな」

「あっ」


コーヒーを片手に、休憩室で一段落していた私は、ひょいっとクッキーの欠片が盗られて振り返った。


「ほれ、資料」


「ありがと」


パサッと頭に直撃した資料の塊を受け取る。


もうちょっと律儀に渡せないのか!


「胡桃沢…」


「ん?」



山口は少し怖い顔をしていて、何かしたっけ?と咄嗟に考えるけれど。


全く心当たりがない。



「今週の土曜日暇?」



「え?何?デートの誘い?」



ビックリして、椅子からこけそうになったのに。

山口の表情は未だに固い。

突っ込みくらい入れてよ!



「実はさ…」


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