檸檬-レモン-



花火大会はちょうど1週間後の土曜日だ。


『気を紛らわすには打ってつけだろ?』


そう言って山口が微笑んだのを思い出す。

私が色々と沈んでいたから、誘ってくれたのかな。

山口だって、他の女の子と行きたいだろうに。

いい奴…


無事にマンションに着いて、山口にお礼の連絡を入れた。


「あ、クルミさん」


クルミさん…?


携帯を操作していた私は、ふと顔を上げる。


胸が、トクンと震えた。


深い深い色をした瞳。


やっぱり、ふんわりと柔らかく笑みを落として。


「こんばんは」


それは私の顔にも伝染するんだ。




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