檸檬-レモン-
「だって、やり直したいとか、戻ってくるとか…そんな期待も何もないよ」
ぼそりと言葉を落とす。
別れてからしばらくはそんなものに期待をしていた。
戻ってくるって。
やっぱりあたしがいいって。
そう言ってくるのを、期待していた。
でも今は、何とも思わないんだ。
ただ、幸せでいてくれればそれでいいって。
その隣にいるのが、例え私じゃなくても。
もう、過去は振り返らない。
過ぎてしまった幸せな日々にすがりついて泣いていても、ただ虚しいだけだから。
余計、苦しくなってしまうから。
思い出を思い出として、抱きしめられるような自分になりたい。
そう、自分の中で答えを出せたんだ。
ハルは少し苦しそうに笑って、これ以上特に何も言わなかった。
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