檸檬-レモン-


「ほら」


お酒でいい感じに火照っていた私の頬に、水滴が流れる。


渡されたのは、ミネラルウォーター。


「…ありがと」


「胡桃沢が酒強いのは知ってるけどさ」


隣に座った山口もミネラルウォーターを持っていた。

私が渡したお金は使わなかったらしく、そのまま財布へと帰ってきた。


そして、透明な液体を一口飲んだとき。



空に花火が打ち上がった。


瞬きも忘れて、消えた後も暫く空を眺めていた。


胸が、苦しい。


やっぱり夏は、息苦しい。



何度も打ち上がる花火は、空に吸い込まれていくようで、パッと咲いては儚く散って。

違う世界に迷いこんでしまったみたい。


幻想的で美しい。


喉の奥が焼けるように、痛い。



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