檸檬-レモン-



「あれ?僕はてっきり"クルミ"さんだとばかり…大変失礼しました」


私はふっと噴き出して笑った。


可愛い、間違えにほっこりしてしまう。



なんだか、ぽかぽかと日だまりの中にいるみたい。


温かくて、柔らかくて、優しくて。



「そんなに笑わなくても」


「初めてです。"クルミ"さんだなんて」


もやもやしていた気持ちが、すっと晴れ渡っていく。

ずっと探していた宝物を見つけたみたいな、嬉しい気持ちになる。


「胡桃沢さん、ですね」

「クルミでいいですよ。ていうか、クルミがいいです」


笑いが止まらない。

小さなことなのに、幸せなくらい笑いが絶えない。


やっぱり、篠崎さんの纏う空気が心地いいのだ。


私、この人に惹かれてる。


レモンを求めるように、もっとこの人の空気を吸いたいと思ってしまう。



知りたい。

篠崎さんのこと、もっと。



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