檸檬-レモン-
再起動
8月に入った。
胡桃沢とは、ぎこちないまま。
時間だけが過ぎていく。
挨拶をしてくれるようにはなったけれど、今までみたいに他愛もない話をしたりは出来なくなった。
こんなに近くにいるのに、遠くなった。
俺が胡桃沢に好きだと言った、代償なのか。
胡桃沢が俺の気持ちに答えてくれないのは、初めから分かっていたことだ。
今まで築き上げた関係を壊してまで、手にいれたいと衝動に駆られたのは確か。
涙を流す綺麗な横顔が、理性を簡単に破壊した。
こうなって初めて気が付く。
胡桃沢がいたから、毎日が楽しいんだと。
いつの間に、大きな存在になっていたんだと。
今更気が付いたんだ。
今日も向かいのデスクで、胡桃沢はキーボードを叩く。
長い髪を、高い位置で1つにまとめて。
長い睫毛が伏せられた刹那、胸の奥が締め付けられるかのように苦しくなる。
.