檸檬-レモン-
目が合った瞬間、電流が走ったみたいに全身が震えた。
胡桃沢は苦い顔をして、慌てて画面の奥に隠れる。
ちょっと声をかければ、簡単に会話できるこの距離がもどかしい。
柴田と楽しそうに話す彼女を目で追いながら、それしかできない自分が情けない。
次に話した時、拒絶されるのが怖いんだ。
なんだよ、俺。胡桃沢を好きになって、どうしようっていうんだ。
まだ、元彼が好きで真っ直ぐに思い続けているのに。
俺を好きになることなんて、絶対にないのに…。
その夜、電話が鳴った。
着信 胡桃沢 奈々
通話を押す指が、携帯を持つ手が、震える。
「も、しもし」
「山口…ごめん、急に」
胡桃沢の声は、心なしか掠れていた。
久しぶりに、俺を呼ぶ声なのに。
「…どうした?」
あぁ、会いたくなる。
耳元で聞こえる声じゃ、足りないと思う。
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