檸檬-レモン-
強制終了
それから1週間が経ち、お盆休みに入った。
有休も兼ねて、10日間ほど仕事が休みになる。
私は朝から、部屋の掃除と荷造りをして実家へ帰る支度をしていた。
篠崎さんからの連絡は、来ないまま。
モヤモヤした気持ちを抱えて、この街を離れるのは少し後ろ髪を引かれる思いだが。
私は部屋の鍵を閉めて、マンションを後にした。
何度も携帯を確認しては、溜め息をはいてしまう。
夏は、嫌いだ。
電車に揺られて、流れていく景色を見ながら蘇るレモンの風味。
息苦しかった毎日に、爽やかな風と笑顔をくれた。
そう、うまくはいかないんだな…
無性に切なくなる。
都心から離れて、緑が鮮やかに発色する地元に着いた時。
それはより一層、強くなった。
夏独特の緑の匂い、蝉の声。
肌を焼く、太陽の光。
毎年感じているのに、懐かしく思う。
「…ただいま」
誰にも聞こえない、小さな声で呟いた。
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