檸檬-レモン-



「オーナー、初めてじゃないですか?」


バイトの若林さんが、ニヤニヤしながら俺を見た。


「でも、ホールに出ないのに連絡先貰うなんて不思議ですよね」


「僕のことはいいんです。仕事しないと時給下げますよ」


「はーい」


クルミさんから、連絡先を書いた紙を貰った。


もしかしたら、クルミさんも…?


そう思わずにはいられない。

でも…



俺は小さく折り畳んで、コック服のポケットヘしまった。


考えている暇などない。

俺は急いでフライパンを振るった。


俺は俺のやるべきことがある。


汗がこめかみを伝う。


夏は、嫌いだ…



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