檸檬-レモン-



部屋まで来た彼女に、ついた嘘。


会って、触れて、堕ちてしまった。

それでも笑ってしあわせだと繰り返す彼女の表情が、本当にしあわせそのものだった。


一気に加速していく気持ちに、抗えない。


全部取っ払ったら、残るのは彼女を愛しいと思う気持ち。


何もかもまるで初めから一本の糸で繋がっていたよう。糸を辿れば彼女に行き着く。
そんな運命的な、感情。


間違っていたのは、俺だ。


素直に、好きだと言えば泣かせることもなかった。


しあわせにできないなんて、自信がなくて逃げてるだけ。

だって、目の前で微笑む彼女はしあわせだと尚も言う。


「僕には、恋人も結婚を考えている女性もいません…」


クルミさんは、瞬きもせずに俺を見つめた。


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