ユビワ
ユビワ
大切な人から、ユビワを貰った。
あの人がくれるものなら、なんだって嬉しい。
だから、貰ってすぐに指に嵌めてみたんだ。
左手の薬指に光る、シンプルな銀色のユビワ。
あの人のはにかんだ顔は、嬉しそうな顔は、忘れられない。
嬉しくて嬉しくて、涙が出てしまった。
けれど、何だか指が重い。
締め付けられる様な重圧感さえ感じる。
あの人の事は、とても大切で、大好きなのに。
あの人とならこれからの一生を添い遂げても良いと思うのに。
なぜ?
あの人がどんな思いでこのユビワをくれたのか分かるのに。
なぜ?
重くなった薬指に、心まで重たくなっていく気がしてしまう。
それでも。
あの人を思う気持ちは変わらない。
だから。
だから、きっとこれは、あの人をこの先一生想い続けることの意味やそれに伴う重責。
そういったものを体現しているのかもしれない。
そう思えば、このくらいの重みは耐えられる。
あの人だって、同じように一生を捧げてくれるのだから。
覚悟の印なんだ、って。
そう思えば、崩れることなく、壊れることなく、これからの人生をあの人と共に——