先生って呼ばないで ~ボクはキミのもの~
ーーーガチャン
「ごめんね、遅れちゃった。」
穏やかで程よい低音の声。
黒い細身のコートに身を包んだその人物は、少し照れたような表情に優しい声音をのせて続けた。
「道わかんなくて(笑)」
気づいたみんながわっと駆け寄る。
「岬ちゃーん!」
「もう来ないかと思ったよー」
「椎名先生お久しぶりでーす‼︎」
私たちのクラスで化学を教えてくれてた椎名 岬(しいな みさき)先生だった。
名前は女性みたいだけど、れっきとした男の先生。
いつも優しい微笑みと穏やかな声の先生で、授業はみんなに大人気だった。
もちろん、私も椎名先生の授業は好きだった。
会うのは卒業以来だ。