先生って呼ばないで ~ボクはキミのもの~
やっぱり可愛くしたくて、散々悩んだ挙句ワンピースにすることに。
あんまり短くない膝丈の、スカートがふわっとしたこのワンピースは、グレーのチェックでお気に入りのもの。
その上はファーの襟が付いた白いポンチョに、カバンは小さめの赤いバッグ。
もちろん、肩からかけられるやつ!
これでライヴ中も邪魔にならず、しかも可愛い!
可愛いかどうかも、女子には大切なことだよね。
何度も何度も鏡の前でチェックして、何だかデートに行く前みたい。
子どもっぽ過ぎないかな?と、隣に立つ先生が恥ずかしくないように、何度も前後左右確認した。
チェストの引き出しから出したお気に入りの腕時計を付けながら、時間を確認すると待ち合わせ時間が近付いてきていた。
「やっば!先生待たしちゃう!!」
カバンの中身をざっくり確認して、慌てて部屋を出る。
階段をパタパタと駆け下りていると、リビングの扉からお母さんが顔を出した。
「出かける時間になったの?あら、今日は随分とおめかしね。」
クスッと笑われて、デートかしら?とウキウキしているお母さんに
「ち、違うよっ!もう行くね!!」
と、少し恥ずかしくなりながら返事をした。
ホントにデートなんかじゃないもん。
と、少しだけ悲しい気持ちにもなる。
「あんまり遅くならないようにね。行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」
相変わらずニヤニヤしているお母さんに、もう何も言わずに手を振って家を出た。
何を期待してるんだよ、お母さん!