先生って呼ばないで ~ボクはキミのもの~
もうすぐ冬が訪れる、
二学期も真ん中に差し掛かった頃。
私、平嶋結衣は人生最悪の失恋を成し遂げた。
「ちょっとそれ、最悪じゃない⁉︎
結衣、何も言わなかったの⁉︎」
怒る元気もない私の代わりにと言わんばかりに、友だちの明希(あき)が怒っている。
「うーん。…正確には、言えなかったの。
だって、あたし孝浩と付き合ってた訳じゃないし…」
にこりと笑ったつもりだったけど、思いのほか頬の筋肉は動いてはくれなくて。
引きつった、空元気な笑顔に、明希が切ない顔をして頭を撫でてくれる。
明希は優しくて、何だかお母さんみたいな温かさのある友だちだ。
「でも、その子は好きだったって知ってて、相談まで受けてたんだよね?
知ってて付き合い始めたんでしょ⁉︎」
今まで黙って聞いてた友だち、悠里(ゆうり)が、もう黙ってられない!という感じで言った。
その横で、若葉もうんうん!と頭を縦に振っている。
明希、悠里、若葉と私は高校で知り合った仲良し四人組。
1年、2年と続けて同じクラスで自然と仲良くなった。
ショック過ぎて涙も出ない。
怒る元気もない。
そんな私の代わりに、友だちたちは怒ってくれていた。
みんな優しくて、その気持ちが有り難かった。