月のセレナーデ
「夏実…、私のお願い、聞いてくれる…?」

「え…?」

母は真剣な顔つきで私を見つめた。

「お願い…」

その真っ直ぐな瞳から逃れられなくて、私は、覚悟を決めた。

「…分かった。お母さんのお願い、何でも聞く。だから、何があったのか教えて」

切羽詰まっている母を落ち着かせるために、私は出来るだけ穏やかに答えた。



すると突然、母は勢い良く立ち上がり、くるっと後ろを振り向いた。

「やったーっ!!許可降りたわよーっ!!」

その声と共に慌ただしくどたどたと階段を降りる音がして、父と弟が顔を出した。

「ほんとか?!」

「やったぁ!!さすが、お姉ちゃん最高っ!」

空気の急激な変化に追いついていけず、私は呆然と家族を見つめた。

はっと我に帰ると、騒いでいた家族に割り込んだ。

「ちょっと、どういうこと?ちゃんと説明して!」

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