月のセレナーデ
先程とは比べものにならない位に目を輝かせ、頬を紅潮させた母は物凄い勢いで私のところまで来て、がしっと肩を掴んだ。

私は母のその力強さと勢いに気押されてしまった。

「あのね夏実、実は今回、家を建て替えるのよーっ!!」

「はぁ…?!」

突然何を言い出すのかと思いきや、突拍子過ぎて思考がついていけない。

「ずっと前からの私の夢だったのよー!でも、家が建つまでどこかに引っ越さなきゃならないわけ」

…まぁ、そうなるよね。

「それでね、とりあえずお父さんの社宅に住まわせてもらうことになったんだけど…」

そこで母は言葉を切った。まるで、言いにくいことがあるかのようにもごもごと口籠っている。

「で?」

私は先を促した。
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