月のセレナーデ
「分かったわよ。そのかわり、気に入らなかったらお母さんをそこに住まわせるからね!」

私が深いため息をつくと、母は跳び跳ねて喜んだ。

「本当に?!ありがとう!流石私の自慢の娘。物分かりが早いわあ!」

そう言って、母は頬にキスをした。

もう、仕方ないなぁ…

夜遅く、塾帰りでヘトヘトになった私には、もう家族と口論するほどの体力は残ってなかった。

なるようになれ、と自暴自棄になっていた。

「…ところで、私を預かってくれる人ってどんな人なの?もちろん女の人よね?」

私が投げ掛けた言葉に父と母がびくっと反応した。
キギギギと音を立てるかの如くこちらを振り向く。

「い…いや、そりゃねえ」

「あ…ああ、会えば分かるよな…」

父と母の挙動不審な行動と曖昧な返事に、私はまたしても嫌な予感を覚えた。

「写真見せて」

そう言って、私は家中の引き出しを探り出した。それを両親は何故か妨げようとした。

「とっても素敵な人なのよ!優しくて、しっかりしてて!」

「そうだぞ!大人な考えを持って、お前はきっと何不自由無く過ごせるぞ!」

そんなの判断するのは私じゃないと思っていると、ふと、机の下に紙切れが有るのが見えた。

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