月のセレナーデ
「…?何コレ」

おもむろに手に取ると、両親が物凄い勢いで私に飛びかかってきた。
手に持ったものを奪い取ろうとしている。

私は魔の手からするりと抜け出し、手に持った写真をひっくり返した。




「とっても素敵な人ねぇ…」

思わず言葉が漏れた。

「優しそうで、しっかりしてて?」

「でしょっ?そう見えるでしょっ?」

「大人な考えを持ってて?」

「そうだぞ、夏実にとって人生の大先輩なんだぞ!」

まぁ、そうだよね。

私は愕然とその場に立ち尽くした。

手に持った写真が儚くひらりと落ちる。
そこには…






よぼよぼの70歳くらいのお爺さんが隙間のあいた歯を見せて笑っていた。
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