月のセレナーデ
階段を降りてリビングに入ると、ふわりと香ばしいパンとバターの香りが、寝起きの私の鼻をくすぐった。
きし、と軋む廊下の木と共に匂ってくる朝食の香り。
部屋に響く食器の触れるメロディ。
窓からは朝日が溢れ、鳥の戯れる声が聞こえる。
真っ青な空
すがすがしい朝
けれども私は、曇った空のようにずっしりと胸に鉛を抱えていた。
昨晩のことがすっきり晴れる訳がなかった。
むしろ、その事を考える度に鉛は密度を増す。
そんな息苦しさを覚えた。