月のセレナーデ

階段を降りてリビングに入ると、ふわりと香ばしいパンとバターの香りが、寝起きの私の鼻をくすぐった。

きし、と軋む廊下の木と共に匂ってくる朝食の香り。

部屋に響く食器の触れるメロディ。

窓からは朝日が溢れ、鳥の戯れる声が聞こえる。

真っ青な空

すがすがしい朝

けれども私は、曇った空のようにずっしりと胸に鉛を抱えていた。

昨晩のことがすっきり晴れる訳がなかった。
むしろ、その事を考える度に鉛は密度を増す。

そんな息苦しさを覚えた。
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop