月のセレナーデ
塾に行くと、授業で使うであろうプリントを大量印刷している服部先生と会った。

「あれっ、石川さん…今日授業あったっけ?」

「いえ、自習しに来たんです。…家じゃ、集中できなくて…」

私はうつむき気味で答えた。

先生の顔が見れなかった。

これから、もう先生の顔が見れなくなると思うと、どうしようもない悲しみが波になって押し寄せてきたためだった。

「…石川さん?」

様子がおかしいことを察知したのか、先生は私の顔を覗き込んだ。

途端、かあっ、と顔が熱くなるのを感じた。

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