月のセレナーデ
第一話 服部先生
その日は雨だった。
「はい、静かにー!」
騒がしい教室内に先生の声が響いた。
私の通う塾のクラスは明るく仲の良い子ばかり、授業中はしゃいではいつも先生達の手を煩わせている。
でも、そのためか生徒と先生は仲が良い。ある意味では、生徒のそんなところが教師の助けになっているのかもしれない。
「先生ぇ!ここ、良く分かんないんだけど!」
「ん?どこ?」
高い声とは裏腹に、低く落ち着いた声が響いた。
ふざける生徒を軽く促しながら、その歳のせいか落ち着いた態度で生徒に接する先生。
その声が、一つ一つの行動が、大人の雰囲気をかもしだしていた。
綺麗に切り揃えてある黒髪で、少し背が低くて、頑張り屋さんな先生…
先生、知ってましたか?
私は先生のことが好きなんです――…