月のセレナーデ
授業も終わり、私は分からない箇所を質問しに先生のところに向かった。
もちろん、あの大好きな服部先生のところに。

事務室に行くと、しん、と静まった部屋を見回した。
けれどそこに服部先生の姿は無い。

おかしいな、と思っていると、奥の方で“カタン”と音がした。


…あ、いた。


服部先生は一番奥の机に向かって何かをしていた。
姿を見つけて、自然と胸の鼓動が高鳴った。

「先生、あの…教えて欲しいところが…」

近寄り、そこまで言ったところで私は足を止めた。

先生の横には既に他の生徒が居たからだ。

「ん?あ、石川さん。ちょっと待ってね、今こっちを教えてるから」

私は「はい」と言って部屋を出た。

< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop