月のセレナーデ
結局、11時30分まで待たされる羽目になった。

「えっ、もうこんな時間?!ほかの先生いなくなってるし!皆酷いなぁ」

いや、それはあなたが問題に夢中になってるから。

しかも、解けてないし…

「うーん、こんなに俺を手こずらせるなんて…、一体出題者は誰なんだ?」

「あ、それ学校の数学の先生です」

「なにーっ?!」

いつもは落ち着いている先生が、数学に関してはこんなにも熱い人だったなんて。

そんな一面を見た私は、1つ多く先生のことを知れた気がして、少し嬉しくなった。

すると、服部先生は急に椅子から立ち上がった。

「さあ、早く帰ろうか。親御さんも心配してるだろうし…」

「あ、はい」

「じゃあ、戸締りをしよう」

そう言って先生は他の教室を回り始めた。わたしが一人帰り支度をしていると、一つの教室から先生がひょこっと顔を出した。

「ごめんね、石川さん。こんなに遅くまで」

「いいえ、こちらこそありがとうございました」

先生と少しでも長く居られたんだから、学校の数学の先生には感謝だね。


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