こいびとごっこ


しばらくすると彼が飲み物2本を持って走ってきた。

「おまたせー」

そう言って投げてきたのは真っ黒い缶。

いわゆるブラックコーヒーだった。

甘党の私にとって最も苦手な飲み物でもある。

飲むべきか迷ってる間に彼はあっさりと
苦いだけの液体を飲み始めた。

…なんか負けたみたいで悔しいから私も飲もう。

彼がニヤニヤしてこっちを見てる気がするけど
別に飲めるからいいし。
たぶん。

口に入れた瞬間に広がる苦味に顔をしかめる。

その瞬間彼が吹き出した。

「それ頑張りすぎだろ!

そんな涙目で睨まれても怖くないから!」

「涙目になんてなってせん。

コーヒーくらい飲めますよ」

またコーヒーを飲もうと思って
缶に手をかけたら彼に奪い取られた。

「それ以上飲んだら月岡本当に泣いちゃうでしょ?」

そう言って人の缶コーヒーを全部飲み干した。

まぁ彼のお金だからとやかく言う筋合いはないんだけどさ。

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