声をくれた君に


「えー、ちょっとショック!」

「みんなの佐野くんだったのにー」

(そうだよね、悠梓くんモテるんだもん…)

「でも、確かに、佐野くんって櫻田さんとはよくしゃべるよね」

「あ、わかる!

いっつも”うん”とか”別に”とか、だいたい3文字以内で返されるのに

櫻田さんとしゃべるときだけはちゃんと文章だよね!」

「そうそう!」

(文章って言っても必要最低限のことしかしゃべってないような…

でも、単語に比べたら、たしかによくしゃべっている方…なのかな)

「俺は人としゃべるの苦手なんだ。

でも、珠李は…別」

悠梓くんは照れくさそうに頭をガシガシとかいた。

「ねえ、珠李だって!

やばーい!!」

女子たちはきゃっきゃと騒ぎ出した。

「ここまでくると逆に応援したくなるよね!」

「そうだね!ふたりともお幸せに!」

「俺が相手だ、幸せにならないわけがない」

(また俺様な発言を…!)

「櫻田、顔真っ赤になってる、ははっ」

私の世界は変わったんだ

悠梓くんに出会えたから

悠梓くんが助けてくれたから

悠梓くんが声をくれたから…

「悠梓くん、ありがとう」

「なんだよ、急に

恥ずかしいやつ」

そう言って彼は耳を真っ赤にしながらそっぽを向いた。


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