声をくれた君に
episode#4
よく晴れた日の朝。
「いってきます!」
「珠李、上靴忘れてるから!」
「え、あ、ほんとだ!
お父さん、ありがとう、いってきます!」
「ははっ、いってらっしゃい」
私は慌ただしく家を飛び出した。
「悠梓くん、おはよう!」
「はよ。
朝から騒がしいやつ」
「だって、今日から3年生だよ!」
4月8日、
今日から新学期がはじまる。
「ま、元気でなによりだな」
「ちょっと、今バカにしたでしょ」
「別に」
「絶対ウソだー」
「早く行くぞ、遅刻する」
「はーい」
私は口を尖らせて見せた。
「なんだ、こうしてほしいのか?」
「え?」
彼は長い胴体を折り曲げ、チュッと小さくキスをした。
「そ、そういう意味じゃないよ!」
「知ってる、俺がしたかっただけ」
「もう…」
新学期の朝は、いつもより甘酸っぱかった。