声をくれた君に


- 珠李side -

「ただいまー」

私はレコーディングに収録、取材など、すべてのスケジュールを終え

わりと遅めの時間に帰宅した。

(あれ、電気ついてない…

私の方が絶対遅いと思ってたのに)

リビングの電気をつけると

「あ!」

ソファに、大きな体が横たわっていた。

「悠梓くん、寝てる…」

私は彼の顔の前にしゃがみこんだ。

長いまつげ、筋の通った鼻、きめ細かい肌。

(私の旦那さんはやっぱりイケメンだなー、なんて)

「悠梓くーん」

私は彼のほっぺたをつついてみた。

「ん…珠李…」

彼は幸せそうな顔で、私の名前を呟いた。

(ふふっ、どんな夢見てるんだろう)

私は悠梓くんを起こさないように、そっと立ち上がった

つもりだったのだが

「うーん…

珠李、帰ったのか?」

(あ、起こしちゃった…)

「ただいま、悠梓くん」

「おかえり」

彼は眩しそうに目をこすっていた。

(猫みたい…)

< 182 / 209 >

この作品をシェア

pagetop