声をくれた君に
高3の夏の日の放課後。
私はいつものように悠梓くんと一緒に帰っていた。
「悠梓くん、ちゃんと勉強してる?」
「俺は勉強しなくてもできる」
(ムカツク…
けど、本当のことだから言い返せない)
今週はテスト週間。
悠梓は頭がいいから、勉強しなくてもそれなりにいい点数を取ってしまうのだ。
「そういうあんたは勉強してるのか?
って聞くまでもないか。
あんたは真面目だからな」
「もちろん、毎日コツコツ真面目に勉強してますから」
「ふーん」
(でも、勉強するとできるは別物なんだよね)
特に国語になると、理解不能すぎて、何度も投げ出しそうになる。
「苦戦してるらしいな」
「え?」
「眉間のシワがすごい」
そういって彼は私の眉間に指をあて、シワを伸ばそうとする。
「ふふっ、くすぐったい」
「じゃあもっとやってやるよ」
「もう、すぐ意地悪するんだから」
(と言いつつ、内心楽しんでる私って、実はM…?)