声をくれた君に
「つーか、どうせ国語で困ってるだけだろ?」
(わ、図星!)
「なんでわかったの?」
「あんた、授業中、国語のときだけ当てられたらワタワタするからな。
見てておもしろい」
悠梓くんの席は、私のひとつ後ろ。
「あ、悪趣味!
こっちは本気で困ってるんだから」
「ごめんごめん」
彼のごめんはひどく棒読みだった。
(絶対悪いと思ってない)
彼の言葉に私がむっとしていたとき
急に強い風が吹いた。
「いきなりどうしたんだろう」
「そういえば雲の色も怪しいな。
もしかして…」
ザーッ
突然降りつける強い雨。
「わー!」
「やっぱり…
とりあえず屋根があるところまで走るぞ」
「うん!」
私たちは屋根を探しながら走った。
「あそこに入ろう」
悠梓くんが見つけたのは、公園の中にあるベンチに備えつけられた屋根。
「ふぅ、もうビショビショ」
「屋根、なかなか見つからなかったな」
「まあこの辺、住宅街だし
家ばっかりだもんね」