声をくれた君に


(ていうかわからなくなったら呼べって…

ほとんど丸投げじゃん。

もう、こうなったらひとりで解いてやるー!)

私はシャーペンを握りしめた。

黙々とノートに現代語訳を書いていく、が

”更衣、帝に扇奉りたまひて、まかり給う”

(え、なにこれ、意味わかんない)

決意して数分、私は壁にぶち当たった。

(いやいや、頑張るって決めたし。

でも、うーん…)

私は悠梓くんの方に振り返った。

「わからないのか?」

「う…そんなこと…」

「あるんだろ?」

「…はい」

「仕方ねーな」

そう言うと、悠梓くんはうしろから私を抱きしめるような体制で教科書を指差した。

「どこ?」

「え、えと、ここです…」

「この文か…

ここは、更衣の後に句点がついてるから主語で、更衣は。

奉るは差し上げる、たまふは尊敬の補助動詞で…」

説明するたびに、私の耳元で悠梓くんの唇が動く。

(む、無理無理!

全然集中できない

全然頭に入らない…!)

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