声をくれた君に
一通り探し終わったが、今日はなかなか見つからない。
新しい場所にでも隠したのだろうか。
時計を見ると、ホームルームまであと1分。
私はひとまず教室に戻ることにした。
教室に入ると同時に鳴り響くチャイム。
私は机と椅子のない自分の席に座り込んだ。
ドアから入ってきた先生は、私を見つけるなり呆れた顔をした。
「ったくお前らはこりねーやつだな。
早く櫻田の机を出せ!
他の先生たちに見つかったらPTAとかで問題にされて面倒なんだから」
この学校に味方なんていない。
先生だからといっていじめを止めようとするわけではない。
面倒なことを避けようと、自分を守ろうと、必死に隠すだけ。
「はー、めんどくさいなー」
そう言って立ち上がったのは、一番前の廊下側の席の男子。
彼はおもむろに掃除ロッカーをあけた。
同時に、ガタンという音がした。
「っぶねー。
誰だよ、こんなところに入れようっつったのー」
そう言いながらも彼は笑っている。
先生は、はー、とため息をつきながら、私の元に机を運んだ。
「ほら、頼むからいじめられるようなことをするな。
その頭と服装変えたらこんなことにはなんねーから、な?」
先生はいじめるみんなではなく、いじめられる私を叱る。
そもそもこの格好が悪いわけではない。
私が髪を染める前から、ルーズソックスをはく前から、彼らはずっと同じことをしてきたのに。
(先生はそんなこともわからないの?)
怒りよりも哀れみを覚えた。