声をくれた君に
「つーか、机汚くなってるし…
おい、誰かぞうきん投げろ」
「はいはい」
(だいたい先生のくせに生徒にぞうきん投げさせるなんて、いろいろ問題があると思うんだけど)
そんな私の気持ちは彼には伝わらない。
先生は投げられたぞうきんで私の机を拭きはじめた。
「なんかこのぞうきん臭くねーか?」
「あ、それ床拭き用のぞうきんなんで」
「そういえばこの前床にこぼした牛乳拭いてたよな?」
その言葉でクラスからドッと笑が起こる。
「ったく、いちいちしょうもないことで笑いやがって。
ホームルームはじめるぞー」
そう言う先生も楽しそうだ。
私は唇をぎゅっと噛み締めた。
「じゃあ日直、号令かけてくれ」
私は黒板の方を見た。
”櫻田”の文字、最悪だ。
「おい、日直誰だ」
「櫻田さんでーす」
隣の席の小田さんが声を上げた。
彼女もまた厄介なのだ。
「ほら、櫻田さん、早く号令かけないと。
みんなが待ってるよ?」
彼女の優しげな表情と、挑発的な目が、あまりにもミスマッチで滑稽だった。
「あ、忘れてたー!
櫻田さんは号令かけれなかったよね。
だって声が出ないんだもん」