半歩前の好き
溜め息radio exercises
*
ポロシャツと膝丈のズボン。
バッと着て、外に出る。
「あー、守。
サンダルとか、まさかやる気ないなー⁈」
「そのまさかだよ」
ってかまさかじゃない。
誰が小6になってまでラジオ体操に行きたいと思うか。
もう俺と千夏くらいしか行ってねぇっつの。
「あ、ちなっちゃん。いつもごめんねー」
「おばちゃーん! 大丈夫だよ」
「もうこの子ったらちなっちゃんの言うことしかきかなくてねぇ。
ほんと、ちなっちゃんのことがす、」
「うわぁあああああ母さん!
遅刻する! から! 行ってくる!」
あの母親ほんと恐ろしい。
ありえない。
お願いです本気でやめて下さい。
ダーッと走り出すと、後ろから「じゃ、行ってきまーす」という明るい声。
帰ってきたらパッキンアイス用意してるわねー、とかなんでそんな仲いいわけ。
「守、置いて行かないでよー。酷いなー」
「……」
うるさいうるさいうるさい。
お前になくても俺には色んな事情があるんだ。