半歩前の好き
家の裏の角を曲がって、ちょっと真っ直ぐ。
それですぐに見える小学校。
グラウンドに駆けこむと、先生と低学年からの「遅い!」の大合唱。
「ごめんなさーいっ」
千夏はへへーっと笑って先生に出席スタンプをもらっている。
……って俺、カード持って来てない。
「はい、センセ!
守の分も一緒に押してちょーだいな」
「なんで千夏が俺の持ってるんだよ」
「え、忘れるんじゃないかなって。
予想てっきちゅー」
いえーい、と仲よく周りの子とハイタッチ。
もう好きにしてくれ。
「守、お前明日はサンダルで来んなよ」
「明日は来ませーん」
「わっかりましたー」
俺の言葉にかぶせる千夏をじとー。
睨みつける。
「勝手に答えんなー」
「やだよー」
同じテンションで言い合っていると、最終的にガン無視の先生の「始めるぞ」の言葉。
先生、こいつを止めてくれ。
ラジオ体操よりもっと大切なことがあるだろ? な?
「ラジオ体操第一〜」
やる気に満ちた千夏を尻目に俺はため息を吐いた。