半歩前の好き
「ねーともや。
仲よしは悪いこと?
そばにいちゃ、ダメ?」
「え、や。別に……」
「でしょでしょー。
じゃあもう気にしないっ」
「え、えー」
無理やりすぎる話の展開。
ちょっとだけ、たじたじなともやに同情。
「まぁね、わかるよ。
ともやも仲よしと一緒にいたいんだよね、うんうん」
「自己完結やめろ」
「せっかくの夏休みなんだから、誰か誘ったらいいよ。
そんでパッキンアイス食べな」
「なんでパッキンアイス出てきた」
「今からあたしが食べるからだー!」
はっはっはっ。
高笑い。
お前ほんと楽しそうだな。
「仲よしと食べるとね、美味しいよ。
そんでね、もっと仲よくなれるんだ!」
にっこり嬉しそうに笑って、
「もう、それだけでいいじゃん」
美味しいから。
楽しいから。
嬉しいから。
そんな単純なことでまとめる千夏。
みんながいつしか忘れてしまうような、シンプルで大切なことだけで生きている。
──────だから、好きだ。
千夏のことが、すごく。