半歩前の好き




「ねーともや。
仲よしは悪いこと?
そばにいちゃ、ダメ?」

「え、や。別に……」

「でしょでしょー。
じゃあもう気にしないっ」

「え、えー」



無理やりすぎる話の展開。

ちょっとだけ、たじたじなともやに同情。



「まぁね、わかるよ。
ともやも仲よしと一緒にいたいんだよね、うんうん」

「自己完結やめろ」

「せっかくの夏休みなんだから、誰か誘ったらいいよ。
そんでパッキンアイス食べな」

「なんでパッキンアイス出てきた」

「今からあたしが食べるからだー!」



はっはっはっ。

高笑い。

お前ほんと楽しそうだな。



「仲よしと食べるとね、美味しいよ。
そんでね、もっと仲よくなれるんだ!」



にっこり嬉しそうに笑って、



「もう、それだけでいいじゃん」



美味しいから。

楽しいから。

嬉しいから。



そんな単純なことでまとめる千夏。

みんながいつしか忘れてしまうような、シンプルで大切なことだけで生きている。













──────だから、好きだ。



千夏のことが、すごく。






< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop