コスモスの花が咲く頃に
思い出の花
ヨーロッパの片田舎…

私は最近、季節ごとに色々な花畑が見渡せる丘の上の高校に通いはじめた。


この村に来たのは6歳の時で、子供のいない夫婦の元に養子に出されたが、とても幸せに暮らしていた。

ところが、8歳になった頃…

突然、お父さんが、私を避けるようになってしまったのだ。




学校の、お昼休み…

私は屋上に上がって、花畑を眺めながら…何がキッカケだったのかと思い返していると、一つの記憶に思いいたった。




8歳の私とお父さんが、コスモス畑の中を歩いている…

白やピンクや赤紫の花が、風にゆれてキレイだ。

お父さんは背が高くやせた人で、とても色が白く、今思うと体が弱かったのかもしれない…

私はコスモスの花を一輪つむと、お父さんに差し出した。

お父さんは、なぜかとても驚いた顔をして私を見ると「ありがとう…」と言って、受け取ってくれた。

その時の表情が印象的で、今でも忘れられない…

その頃からお父さんは、ふせがちになり寝込むようになった。
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