音色
… 1 …
野々部利香(ののべ りか)がピアノを始めたのは、従兄の影響を多分に受けたから。
それは紛れもない事実。
父親同士が双子で、家も仲良く隣同士。
お互いに兄弟がいなかったこともあって、幼い頃は光(ひかる)――従兄のあとをついてまわったっけ。
その延長で始めたピアノ。
5歳という年齢差は、卓越したセンスと絶対音感の持ち主だった光との腕の差をあっさりと認めさせるにはもってこいの絶対的な「差」となった。
とはいえ、利香自身もそれなりの音楽センスを引いたようで、
「ゆくゆくはピアニスト」
なんて言われていたこともあった。
そう、「あった」。
今は、私立高校で音楽教諭として働く身。
音に囲まれて、音を仕事として、充実した毎日を送っていた。
そう、「いた」。
あの「音色」に出会うまでは――。
それは紛れもない事実。
父親同士が双子で、家も仲良く隣同士。
お互いに兄弟がいなかったこともあって、幼い頃は光(ひかる)――従兄のあとをついてまわったっけ。
その延長で始めたピアノ。
5歳という年齢差は、卓越したセンスと絶対音感の持ち主だった光との腕の差をあっさりと認めさせるにはもってこいの絶対的な「差」となった。
とはいえ、利香自身もそれなりの音楽センスを引いたようで、
「ゆくゆくはピアニスト」
なんて言われていたこともあった。
そう、「あった」。
今は、私立高校で音楽教諭として働く身。
音に囲まれて、音を仕事として、充実した毎日を送っていた。
そう、「いた」。
あの「音色」に出会うまでは――。
< 1 / 25 >