音色
 送り主は、当然、光。

「たまには顔見せろ」
 同封された一筆箋には、ファンに見せたら100年の恋も一気に褪めるような文字でそう綴られていた。
 解読できるのはごくごく身近な人間だけ。

 そのひとりであることに利香は複雑な心境を覚える。
 彼が有名になること。
 最初は嬉しかった。

 あのひと、わたしの従兄なんだ。
 そう、触れて回ったくらい。

 でも、それは次第に重荷となり、利香の存在を知った嫉妬に狂った一部のファンに言われのない嫌がらせをたくさん受けるようになると、光のこと自体を疎ましく思うようになっていた。
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