雨の残照【短編】
「こんな所にいたら熱が出ちゃうわ」

 やや筋肉質の腕に触れようとすれば、青年はそれを避けるように後退した。

「接触は許可出来ません」

「え?」

 まだ言うのこの人……呆れて青年を見上げた。

 百六十二センチの自分と比べると、青年の身長は百七十五センチほどだろうか、細身だけどしっかりした体格なんだと半袖から覗く腕で解る。

 年齢はどれくらいだろう、二十八歳の自分よりもかなり若い気がする。

 二十一歳かそれくらいかもしれない。

「諸事情により人体に影響を及ぼす物質を体内に有しています。無害なエネルギーへの変換に伴い大量の熱を発生させるため現在、冷却作業を行っています」

 何を言っているのか全然、わかんないんだけど。

 誰か説明してほしい。

「え、ちょっと待ってよ。冷却ってことはやっぱり熱があるんじゃないの?」

 ちょっとおかしな人だけど、熱があるなら病院とかに行かなくちゃ!

 腕を引っ張ろうと伸ばした手をさらにかわされる。
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