*短編集* 『 - 雨 - 』



「なんで、あんな顔するんだよ……。今までずっと、榎本が望む通りの友達続けてきたのに……。
今までの俺の努力が台無しだ」
「私が望む通りって……」

違う。だって……友達を望んで一歩の距離を詰めなかったのは、黒田の方だ。
なのに……なんで、男の顔して私を見てるの……?

なんで、ずっと入れてくれなかった線の中に、今、私を入れるの……?

「本当は……ずっと隠しておくつもりだった。
榎本が、俺と友達でいたいってのは分かってたし、俺もその方がいいと思う時もあった。
……けど」

そこで一度言葉を止めた黒田に、そっと視線を上げると……。
真剣な瞳が私を見つめていた。

初めて受ける視線に、胸がとくんとテンポを上げて動き出す。

「俺はやっぱり……友達じゃ足りない。
他の男に榎本をとられるなんて、考えられない。祝えるわけがなかったんだ……最初っから」

「榎本が好きだ。ずっと前から」

そう告白する黒田の真っ直ぐな視線を、しばらく信じられない思いで見つめていた。

だって。
黒田が言ったのは、ついさっき私が考えていた事と同じ事だったから。
まさか……そんな思いでいっぱいだった。


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